株式会社松屋 | データマイニングを活用し、顧客行動の定量的理解を実現。顧客マーケティングの基盤として Teradata を活用

背景

銀座の街が暮れなずみ、ライトアップがされる頃、大きく白い光で浮かび上がり、通りを優しく照らすビル。松屋銀座店は 1925年にオープンし、2006年の外壁全面改修を経て今の姿になりました。松屋銀座店は昔から、そして今も、世界有数のラグジュアリー・ストリートである銀座の象徴として存在してきました。「この街に足を運び、お買い物をする人々の心をつかみ、ご満足頂けるような品揃えと接客によって、長きにわたる関係を構築していくこと」が同社にとっての大きなテーマであることは、今も昔も変わりません。有楽町から銀座に至る、ファッションビルや高級ブランドショップの商業集積は近年激化の一歩をたどっており、このテーマがますます重要になることを物語っています。

目標

売り場面積の多くがファッションや高額品を中心とした商品で構成されている百貨店にとって、毎日のようにお客様にご来店いただき、お買い物をいただくことは叶いません。そのような中で魅力的な案内を行うことによって、なるべく多く自店に来店いただくこと、そして来店時により多くの商品をお買い上げいただき、満足していただくことが重要なファクターとなります。同社が志した顧客マーケティングも、顧客の嗜好性を理解し、それを店頭の販売員の知識やアイデア、アプローチとして結実させることを目標としていました。

結果

  • 一元的な顧客データの蓄積による、柔軟な分析環境の実現

  • RFM値を利用した顧客重要度の正確な把握

  • 優良顧客の識別、維持、拡大の実現

  • 店頭担当者、外商担当者の販売、マーケティング業務を情報活用の観点から強力に支援

  • 店外催事において、前年比 120%を超える売上増加を実現

会社概要

株式会社松屋は 1869年に横浜で創業し、現在は銀座と浅草に店舗を構える百貨店です。同社は 2001年に銀座店をリニューアル、その際に「ファッションと情報発信の松屋」を掲げ、ストア・アイデンティティを革新、歴史と流行が同居する街、銀座の情報発信源として自らを位置づけています。そして弛まぬ売り場作りによって、洗練された人々の行きかう街、銀座で多くの支持を集め、銀座地区における一番店としてその地位を確立しています。また、同社の発行する「松屋カード」、「松屋ポイントカード」は現在、25万名を超えるお客様にご愛用頂いています。このカードはお客様に便利な特典を提供する役割と同時に、お客様の好みや生活スタイルをより深く理解し、売り場での品揃えや接客に活かし、より大きな満足を感じていただくための重要な媒介となっています。

課題

同社が Teradata を導入するきっかけとなったのは、2001年の銀座店リニューアルでした。大規模な改装を終え、新たにリニューアルした店舗に来店するお客様。そこにはどんなお客様が来店し、どのような商品やサービスを好まれていらっしゃるのか - 自社が有する情報はそれを知るのに充分でなかったり、あったとしても散在していたりしていたため、企業としてそれを分析に活用し、店頭での各施策に活用できるレベルになかったのでした。

具体的には買上明細情報の顧客識別化率が低いため、自社に来店してくださるお客様それぞれの重要度、嗜好性、そして全体傾向について理解できなかった点が大きな課題となっていました。長くご来店いただき、ご愛顧いただいているお客様に報いるためにも、新たにご来店いただいたお客様に再度ご来店いただき、松屋をより深く知っていただくためにも、このような情報量の不足と情報活用環境の不在は大きなボトルネックでした。1度きりのご来店ではなく、2度、3度とご来店を促していくための手段に欠けていたのです。同社ではこの課題を解決するために、新たなカードプログラムを展開し、そしてそこから得られた情報を分析するデータウェアハウスの構築に取り組むことにしました。顧客理解のために必要な情報を入手すること、そして得られた情報を蓄積し、活用していくための環境を実現することにしたのです。

ソリューション

同社は 2004年、自社のお客様に対するより深い理解を得るために、Teradata を導入しました。POSシステムから得られた 3年分の買上明細データと、カードプログラムによって得られたデータをデータウェアハウスに蓄積しました。またあわせて商品や組織のマスターデータ、催事の企画、案内、そして反応データを蓄積し、顧客に対して行われるマーケティング・アプローチを一元的に管理できるシステムを構築しました。

ここで得られたデータは大きく、顧客情報分析のアプリケーションと、営業情報の分析アプリケーションで利用されています。顧客情報分析のアプリケーションでは、RFM (Recency、Frequency、Monetary: 直近未来店日数、来店頻度、買上金額) や、デシル分析によって顧客の重要度、同社に対する支持度合いを定量的に評価できるようになっています。これに加えてデモグラフィックデータや購入ブランド、買い廻り傾向を分析することが可能です。また、催事案内時の顧客抽出、催事企画の管理、そしてその評価に関する機能も備えています。営業情報分析のアプリケーションでは、販売活動を商品階層や時間階層からドリルダウンできる形式になっており、販売活動上のボトルネックや、注視すべき傾向を即座に特定できるようになっています。

同社はさらに、顧客理解の取り組みとしてデータマイニングの活用を始めました。Teradata 上で稼働するデータマイニングツール、Teradata Warehouse Miner を導入し、データウェアハウス内のデータに対する分析を実施しています。お客様が求める商品のご案内、接客対応を実現するためには、より深くお客様を理解し、データウェアハウスに内在するデータから最大限の知識を獲得することが不可欠となります。このためにデータマイニングの分析手法を採用し、さまざまな観点から定量的に顧客の購買活動を把握し、催事案内するべき顧客の論理的な抽出を行うことに取り組んだのです。

導入効果

Teradata を利用した顧客マーケティング活動を進めていくことによって、同社では顧客に対する理解を深め、得られた理解に基づいたマーケティング・アプローチを実現できるようになりました。また、実施した活動の逐一は Teradata 上に蓄積されるため、企画段階で設定した仮説が正しかったのかを評価することが可能となりました。

現場担当者をまきこんだ顧客マーケティングの実現

同社では、現場の担当者をまきこんだ顧客マーケティングを実現するため、新たに「Jリーダー」というポジションを設置しました。Jリーダーは顧客マーケティングの観点から、各売り場、ブランドショップに対する支援を行います。たとえば、各売り場、ブランドショップの責任者と一緒に毎月、RFM 等の推移を確認し、実施すべき施策についての検討を行います。また、あるブランドショップが催事を企画する場合、Jリーダーはショップ責任者と相談しながら対象顧客の抽出条件を決定し、対象顧客を抽出する役割を有しています。セキュリティ上の観点も踏まえ、このような役割を任されているのは同社でも Jリーダーのみです。

このように同社では、Jリーダーを通じて、店頭で直接販売活動をする担当者と、データの結び付けを実現しました。企業として一貫性のある顧客マーケティングを実現しつつ、現場のアイデアや状況にも対応可能な体制を構築することに成功したのです。結果、各売り場では、データを通じて顧客の顔が見えるマーケティングを行うという意識が浸透していきました。データを通じて、重要顧客が誰かを理解し、顧客の嗜好性を理解することが可能となったのです。

クラスター分析による顧客行動の分類

データマイニングを通じた分析によっても、現場の顧客マーケティングを改善するための知識をいくつか導き出しています。たとえばクラスター分析によって、秋冬物の新作に反応する顧客群が導き出されました。一方で最新の買上動向を重ね合わせると、過去の傾向では秋冬物の新作に反応したにもかかわらず、今シーズンの新作投入後には来店いただけていない顧客が存在することもわかりました。そこで同社では、これらの顧客に対してダイレクトメールを案内することにしました。結果、特定クラスターでは 30%を超えるレスポンス率が導き出されました。

また同社では、クラスター分析の結果をより包括的に利用しようと試みています。たとえば、どのような商品カテゴリーに支持が集中しているのか、平日来店を好むのか、それとも休日来店を好むのか、シーズン内のどのタイミングで来店する傾向にあるのか等に基づいてクラスタリングを実施しています。これによってこれまで実施していたRFMだけでなく、顧客の行動パターンや嗜好性に基づいたセグメンテーションが可能となり、それを各催事や施策展開時におけるターゲティングの切り口として活用することが可能となるのです。

アソシエーション分析に基づく顧客嗜好性の理解

同社では、数多くのブランドショップで売り場を構成しています。幾つものブランドでお買い上げいただけるお客様がいらっしゃる一方で、特定のブランドでしかお買い上げいただけないお客様もいらっしゃいます。同社にとっての疑問の 1つに、「これらのお客様は、本当に特定ブランドにしか関心がないのか? それとも松屋からの提案が足りないのだろうか?」という点がありました。このような疑問を検証するため、「あるブランドにとっての既存顧客」が「別のブランドにとっての新規顧客」になる可能性をアソシエーション分析という分析手法で検証し、実際にアプローチに活用することになりました。

アソシエーション分析によって、「特定の複数ブランドを購入している顧客が、案内を行いたい対象ブランドで購入する確率」を信頼度として算出することが可能となります。このルールの信頼度が高い場合には関連性の高いブランド・コンビネーションであることが想定されますが、一方で「特定の複数ブランドを購入しているにもかかわらず、対象ブランドで購入していない顧客」も存在します。このような顧客に対して対象ブランドを案内することによって、同社が抱いた疑問のいずれにそれぞれの顧客が該当するのかを判別することが可能となります。アプローチの結果、一定数の顧客が今まで購入していたブランド以外からも購入いただけるようになりました。一方で従来からのブランドを排他的に支持する顧客も存在することがわかりました。これらの顧客に対しては、現在支持頂けているブランドを継続的に提案していくことが求められていることもわかったのです。

ロジスティック回帰分析による催事反応確率の算出

ロジスティック回帰分析は、過去の顧客行動結果を、関連するデータを用いて説明する分析手法です。顧客の行動予測を確率として算出する数式モデルが構築され、この数式に各顧客データを入力することによって顧客行動の発生確率を予測します。たとえばある催事における特定顧客の来店確率が 0.6、つまり 60% であるとした場合、同様のデータを発生させた顧客の 60% が、催事来店買上という行動結果を示したことを意味します。

実施されたある店外催事においては、案内顧客の抽出ロジックとしてロジスティック回帰分析が用いられ、顧客の催事反応確率が算出されました。これに基づいた案内では、事前の予測に対して 90% 以上の精度を実現し、催事の成功に大きく寄与しました。催事企画そのものの魅力、外商担当者の徹底した事前電話フォローに加えて、このような論理的なアプローチを行うことによって、結果的に当該催事は前年比 120% を超える売上を達成しました。

Teradata を採用した理由

同社が Teradata を採用した理由は、大きく 3つありました。1つは柔軟な分析ができる環境の確保。導入以前には情報が点在した状態であったため、必要な情報を一元的に管理し、いくつもの情報を重ね合わせ、包括的、多角的に分析できる環境を構築することが条件として求められました。また 2点目として、本部のスタッフだけでなく、現場の販売担当者も含めた利用がなされるため、同時並行的に多数のユーザーがアクセスする環境を備えられることが求められました。Teradata はこのような要件に対して、明細レベルのデータを保持し、多角的に分析することが可能であり、さらにこのようなデータに対して、同時に多数のユーザーがアクセスする際に、高いパフォーマンスを提供しています。

これに加えて 3点目。Teradataが国内外、特に国内の百貨店業界において多くの導入実績を有していることも導入の決め手となりました。同社が求めていたのは純粋に優れたテクノロジーだけではなく、それをどのように業務へと活かしていくかという適用に対する提案でした。顧客マーケティングの分析、企画から、実行、評価に至るすべてのプロセスで発生するデータをどのように管理していくべきか、そして分析や催事案内における顧客抽出で、どのようなアプローチをとれば良いか ‐ このような点において、Teradata が同社の置かれた環境に基づいた提案ができた点も採用理由として挙げられます。

Teradata を導入する際に念頭においたことは、単に IT を導入するだけではなく、それを活用し、お客様に対する理解、そしてアプローチに役立てるためにはどうすれば良いかという点でした。分析から仮説を立案し、実際に店頭でそれを検証していく - この積み重ねが企業としての知力を向上させることにつながります。成功だけでなく失敗も含め、仮説検証の繰り返しこそが、ビジネスを遂行していく上でのノウハウになっていくのです。


株式会社松屋
お得意様営業部 様