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ビジネス「生態系」データエコシステムが新しい収益構造を導く

現代のビジネスシーンでは、個々の利害や便益が複雑に絡み合い共存する、まさに「生態系」のような構造が形作られています。データエコシステムはそうした直接・間接的な共存の関係を、データの流通によってさらに高め、新たなビジネスモデルの創出につなげようとするものです。これまで企業内に閉じられていたデータを、相互に活用することで顧客のベネフィットを高め、企業や業界、産業の収益へとつなげていきます。ここではデータエコシステムの基本的な考え方と、成長著しいIoT(モノのインターネット)市場との関係、さらにビジネス業界の今後について解説していきます。

データエコシステムとは?

データエコシステムの概念

データエコシステムは、Ecosystem(生態系)をビジネスシーンに置き換えたことばです。

自然界では生物・植物などが、お互いに共存しながら生態系を維持してきました。どこか一角が崩れると、全体に影響を与えたり生態系の在り方が変わったりということが起こります。


現代のビジネスもまた、お互いが複雑に絡み合い、目に見えない糸でつながっています。

ビジネス・データの世界に「生態系」という概念を当てはめ、IT・通信などのデータを介して業種・業界・製品が連携と共存をしながら収益構造をつくり上げるという考え方が、データエコシステムです。


データエコシステムの重要性を提唱するIT専門調査会社のIDC Japanでは、この構造について、以下のように定義しています。

“企業がIoTプラットフォームを通じて収集するIoTデータや、基幹系システムなどに蓄積しているデータなど、企業内部におけるさまざまな1stパーティデータを、外部の2ndパーティ/3rdパーティデータと掛け合わせ、あらたなビジネスモデル/収益モデルを創出すべく形成するステークホルダーの集合体”

データエコシステムの特徴

これまでもデータの共有は、ビジネスにおけるさまざまなシーンで行われてきました。データエコシステムには、どのような特徴があるのでしょうか。


最も大きなポイントは、より幅広く多彩な企業間でデータを共有・流通させるという点です。そこで取り扱われるデータは、IoT機器のようなモノが生成する「IoTデータ」のほか、人や企業の活動から生成される「非IoTデータ」も含まれます。IoTデータはIoT家電や工場のIoT機器など、現実生活の中で収集されます。非IoTデータは、レジのPOSシステムや交通情報などあらゆる人間の活動から得られるデータです。


既存のビジネスの形では、直接的に大手メーカーとパーツ供給企業がつながる「垂直統合型」が主流となっていました。データエコシステムでは、そうした目に見える直接的なつながり以外にも、間接的なつながりに広がりを持たせることになります。


例えば、これまでは情報が収集されても、ひとつの企業グループの中でしか活用されない「閉じられた」データ群となってしまうことが少なくありませんでした。しかし、エコシステムはデータ群を広域に利用できるようにすることで、縦横の関係を取り払い、データ活用に自由性を与えます。


また複数のエコシステムが互いに連携することで、ほかの要素間の相互作用からも影響を受け、思いもよらない波及効果が期待されます。データエコシステムは動物や植物が自然に共生するかのように、企業同士が間接的に相互に影響を与え合う環境を構築していきます。

データエコシステムの浸透により経済に新たな視点が加えられ、モノ・情報などの新しい価値形態がさらに重要視される世界へと進化していくでしょう。


多様なステークホルダーが多彩で豊かな取引関係を持ち、分業・協業による共存共栄の関係をつくり上げることで、新たなビジネスチャンスが開けていきます。


データエコシステムとIoT

IoTデバイス接続数の急速な拡大とその影響

データエコシステムの形成が急がれる背景には、IoTデバイスの接続数の急速な拡大があります。


すでにスマートフォン・通信機器については市場が成熟、さらに家電や自動車・住宅・ビル・工場のIoT化が進んでおり、また輸送機器や医療、産業用途(工場、インフラ、物流)などではすでにデータ活用が深く浸透しています。


IoT化とは、モノがインターネットとつながり、通信をする状態です。

IDC Japan株式会社では、全世界のIoT機器の普及台数は2025年には416億台に達すると予測しており、これまで以上に日々膨大な量のデータが送り出されていくと予想されます。同社によれば、2020年には20兆GB過ぎなかったIoTデータが2025年には79.4兆GBに、IoTデータと非IoTデータの合計が163兆GBにまで達する見通しです。


この流れに乗りビジネスを加速させていくためには、データの孤立を脱却し、資源として共有していくことが求められます。


IoT市場の成熟とデータ流通

日本国内の現状を見ると、ITベンダーやクラウドプロバイダー、各通信キャリア、産業機器メーカー、半導体関連ベンダーなど、さまざまな分野の企業がIoTソリューションを提供する形となっています。


IoTプラットフォームという面から見ると、十分機能が充実し、ニーズへの対応が行き届いてきていると言えるでしょう。


一方でデータ活用については、企業内のみでの活用とユーザーへのサービス提供の範囲にとどまっており、企業間でのデータのやりとりは進んでいない状況です。


提供する側ではIoTプラットフォームの機能がすでに横並びとなっているため、差別化が難しくなってきています。それを利用する企業側でも、自社内だけでのデータ活用ではユーザーへのサービス還元の広がりに限界があります。


データの新たなる価値の掘り起こしがなされないままでは、ジネスに行き詰ります。取得したデータをいかにオープンに活用していけるかは、企業の成長にとっても重要なポイントになると考えられます。


データ活用を業界内へ広げようとする動きはありますが、依然としてデータの活用が特定のステークホルダー内で閉じているケースが圧倒的多数を占めています。

他方、マーケティング分野ではデータの共有が先行しており、各業界への見本となりそうです。


エコシステムマーケティングの最も先駆的な成功事例として知られているのが2008年の日本コカ・コーラと日産自動車のキャンペーンです。まったく異なる分野の巨大企業が、お互いのデータを持ち寄りキャンペーンの精度を高めることで、成功へと導きました。


データエコシステムにより、企業間でのデータの流通が行われ、新たな価値を生み出していく取り組みが見られます。


データエコシステムが変えるビジネスの今後

各分野の垣根を超えたデータ流通

デジタルマーケティング分野ではデータ流通によって顧客への理解が一層深まり、ニーズ把握の精度を高めるのに貢献しています。今後はさらにIoTデータが加わることで、サービスの向上や企業運営に活かされることが期待できます。


顧客動向の把握がリアルタイムかつ詳細に行われることにより、顧客が抱えている課題やニーズ対応へ活かせるようになります。これはデジタルマーケティング分野に限定されることではありません。すべての産業において、データエコシステムの活用で顧客満足度向上が実現されるでしょう。


またデータ活用の対象が企業間取引にも拡大していけば、ビジネスの円滑化につながっていきます。


データエコシステムの導入については、データ流通への技術的な問題が早期に解決されて制度の整備が進むという見方がされており、相互的メリットが大きい分野から促進され、それにけん引されて他分野でも急速に拡大していくと見られます。


一方でデータエコシステムを利用する企業間の収益の配分や、データの取り扱いにおけるプライバシーの問題が大きな課題です。また導入に当たっては自社データの開示という点での反発も予想され、各企業の意識改革とデータエコシステムへの理解が重要となります。


データエコシステムに対する3つの動き

現在のところ国内では、データエコシステムに関する動きが3つほど見られます。


先にも挙げたように、物流や製造の分野では、現場に特化したソリューションを構築するためのデータエコシステムが増加しています。グループ企業にこだわらず産業横断型でデータ活用が行われ、バリューチェーン・サプライチェーンのつながりを強化する動きが目立っています。


また、これまではIoTデータにとどまっていた共有から、非IoTデータも含め、物理領域の境界をなくす「イノベーションの連鎖」が加速する動きも見えてきました。一例としては、SNSデータやアンケート調査データ、人流分析データ、オープンデータなどの、あらゆるデータの価値を可視化した情報だけをブロックチェーン台帳で管理し、複合的に分析することで地域社会の発展に産学が協働で取り組む起点となっているサービスを提供している企業もあります。


さらにデスクトップ環境をクラウド経由で利用できるクラウドサービス「DaaS」のような基盤を通じて、データを提供するベンダーが増加しています。こうした新たな仕組みの活用が進むことで、企業間における情報の共有化の垣根が取り払われつつあり、データの自由取引を感じさせる動きとして注目されています。


まとめ:データ流通がもたらす新しい価値観

IoT市場の拡大により、データ活用への取り組みは待ったなしの課題となっています。しかし企業やその周辺だけにとどめておくことは、自社にとってもビジネス社会全体にとってもマイナスでしかありません。


データの価値は、その流通によって飛躍的に高まっていきます。すでに製造業や流通業などでは、産業に特化したデータエコシステムが増加し、各分野での取り組みが開始しています。この動きを加速していくためには、各企業におけるデータのバリアフリー化への意識改革がカギとなります。

参考:

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Teradata Ecosystem Manager

Teradata QueryGrid™

真に柔軟性のある分析エコシステムの構築と運用

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