
【Teradata Universe Tokyo 2017イベントレポート】
オープニングでは、日本テラデータの代表取締役社長 吉川幸彦が挨拶した後、テラデータ・コーポレーションCTO ステファン・ブロブストが「リーダーシップとデジタル・トランスフォーメーション」というタイトルで基調講演を行った。
21世紀の企業の選択肢は3つ
冒頭でプロブストは、21世紀の企業には、以下の3つの選択肢しかないことを示した。
すでにデータカンパニーになっている
これからデータカンパニーになる
存在意義を失い市場から顧みられなくなる
「たとえば自動車メーカーは、データとアナリティクスに投資することで、自動車のハードではなく、より良いユーザー体験(UX)の提供で収益を得られるようになっていくだろう」(ブロブスト)他にも機械学習を活用することで、レコメンデーションを強化したり、不正行為を減らしたり、不正にリアルタイムに対応できたりするようになるという。
このように、アドバンスト・アナリティクス(高度なデータ分析)から価値を生み出すようになることが、デジタル・トランスフォーメーションだとブロブストは言う。
価値を最大化にするためには
では、アドバンスト・アナリティクスで最大の価値を生み出すにはどうしたらいいのだろうか。ブロブストは以下の手順が必要だと述べた。
全ての製品・チャネルをまとめあげて顧客の単一ビューを作る。
何百・何千もの細かいセグメントに分類し(マイクロセグメンテーション)、各セグメントで個々の顧客のカスタマー・エクスぺリエンスを設定する。
キラーアプリケーションを開発し、リアルタイムに顧客にサービスを提供する。
カスタマー・エクスぺリエンスは、フィードバックされたデータを基に常に改善し続ける。
また、アドバンスト・アナリティクスによる価値の最大化をすでに実現している企業として、ブロブストは以下の3社を紹介した。
アマゾン:レコメンド・エンジンに投資して、売上高の最大30%をレコメンドから得ている。
ネットフリックス:レコメンドが視聴全体の75%を占めている。誰もが見たがっている作品ではなく、顧客が知らなかったコンテンツを推奨。古い作品だと使用ロイヤリティが低いためネットフリックスの利益にもなり、映画会社も思いがけないロイヤリティが入り、顧客も新しい体験ができるという皆が得をするサービスである。
リンクトイン:大学・職場などのデータから高度な分析で、有用な人脈をレコメンデーション。高い利用率を実現している。
未来は、データを製品に転換できる企業の手の中にある
オライリーのマイク・ルキダス氏は、 「未来は、データを製品に転換できる企業の手の中にある」と言う。そのためには、「ビジネス・インテリジェンスをコンシューマー・インテリジェンスに進化させる。つまり、顧客により良い意思決定をするためのデータを提供することで収益化する方法がある」とブロブストは指摘し、その一例として、SCE(サザン・カリフォルニア・エジソン電力会社)のスマートメータープログラムを紹介した。
SCEでは、スマートメーターを全ての家庭に設置し、毎分・毎秒個々の世帯の消費電力をモニターできるようにした。ビジネス上の目的は、昼夜の発電のバランスを取り、必要資源のコストを下げることだが、顧客は自宅の電力消費をモニタリングできることを評価し、騒音・大気汚染・室温などのモニタリングにも関心が広がり、新しいビジネスチャンスにつながったという。

意思決定にデータを活用しないと……
ブロブストは、データを活用しない意思決定は「HIPPOの原則」に陥ると指摘する。これは最も報酬の多い人(HIghest Paid Person’s Opinion)、すなわち「現場での成果に責任を持たない人の意見に従うことになる」という法則である。
「多くの企業でアナリティクスが根付かない最大の原因は、技術不足ではなく社内文化だ」とブロブストは強調する。CFOやCMOは今までデータを使わずに意思決定をしてきたので、抵抗勢力になることが多い。その意味では、経営層の教育も必要だという。
ガートナー・レポートによれば、人材としてはデータ・サイエンティストが最重要だという。優れたデータ・サイエンティストは、好奇心が強く、問題解決の役に立つパターンを見つけだす直観に優れ、データ収集のスキルがあり、統計への深い理解があり、モデリングもできる上、専門の統計用語に頼らずにビジネス用語で説明するコミュニケーション能力を持つとブロブストは説明する。
また、データ・サイエンティストのチームを作ることが大切で、そのチームには様々な性別・年齢・出身母体等のメンバーを集め、意見を戦わせることで、アイデアをより優れた強力なものにしていく必要があるという。
イノベーションとガバナンスの関係
企業は、30%はコアの改善に、60%は既存ビジネス内での新しい機会へ、残りの10%は、確率は低いが成功したら高いリターンを得られる機会に――といったバランスの良い投資をする必要がある。
また投資に関しては、ガバナンスとイノベーションの関係についても考慮すべきである。
ガバナンスもイノベーションもどちらも弱い領域には、とどまるべきではない。
ガバナンスが強く、イノベーションが弱い領域は、現在の稼ぎ頭であり、次世代への投資に使う資金を産む。
ガバナンスが弱く、イノベーションが強い領域は、先端の技術者が新しい技術を追い求めているが、それがビジネスサイドの賛同を得られていないのであれば、良いとは言えない。
ガバナンスもイノベーションも強い領域こそ、目指すべきものであり、ITとビジネスが協力しながら、ビジネスがイノベーションをリードする。
5つの成熟度のステージ
最後にブロブストは、センティエント・エンタープライズ(データに対する感覚が強い企業)になるためには5つのステージを登って、徐々に成熟していく必要があることを示した。5つのステージとは以下の通りである。
社内文化を変革して俊敏性を得る。
トランザクションから行動を理解する。
データ・サイエンティストとIT人材、ビジネス人材のコラボレーションを形成する。
アプリケーションを開発し、データを活用する。
ディープラーニングや機械学習を活用してデータを解釈し、それに基づいて(90%の)意思決定をする

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