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【TU-10】「じぶん仕様プロジェクト」の取組みについて|株式会社じぶん銀行


【Teradata Universe Tokyo 2017イベントレポート】

先進企業での具体的な取り組みとして、株式会社じぶん銀行 マーケティング部 調査役 冨加見大晃氏から「『じぶん仕様プロジェクト』の取り組み」というタイトルで、モバイル銀行におけるOne to Oneマーケティングの取り組みについての講演があった。

冨加見氏は、三菱東京UFJ銀行で3年間法人営業に携わった後、2012年にじぶん銀行出向した。カードローンの広告を2年担当してから、DWH構築に携わり、テラデータ製品で行内のデータを統合する。以降、One to Oneマーケティングシステムの基盤作りである「じぶん仕様プロジェクト」をサポートし、現在は同じシステムの運用を推進している。。

じぶん銀行の概要と事業モデル

じぶん銀行は、2008年にKDDIと三菱東京UFJ銀行が50対50の比率で共同出資して設立したネット専業銀行である。現在従業員は、派遣社員やパートナー企業の常駐社員を含めて約750人いる。これは、冨加見氏が出向した5年前の倍ぐらいの人数だという。口座数242万、預金残高7716億円、貸出残高3272億円は、ちょうど第二地銀ぐらいの規模だ。2015年12月に住宅ローンをリリースしてから、貸出残高が伸びている。

じぶん銀行は、決済や資産運用など特定の業務に注力するのではなく、お客様に様々なサービスを提供するフルバンキングを目指している。そのため、預金商品、決済、カードローン、住宅ローン、FX、証券仲介、スマートフォンアプリなど様々な商品・サービスを用意している。

その中でもじぶん銀行ならではの特色ある商品は、たとえば景品付き円定期預金である。100万円以上を1年以上預けると、くじ「BIG」がもらえるもので、同行のみのサービスだ。またスマートフォンがあれば、キャッシュカードがなくてもATMで入出金できる「スマホATM」も同行独自のサービスである。

KDDIが親会社であることから、開行当初は、「手のひらに銀行を」という経営理念を掲げていた。

現在は「SMARTな『金融サービス』と、MOBILEならではの『楽しさ』の提供を通じて、お客様に素敵なSMILE(SM+ILE)をお届けする」というのが同行のスローガンだ。また、2011年からは、「スマホ銀行」を標榜し、スマートフォンでの銀行サービス提供に注力している。

既存の銀行では、支店店頭からATM、パソコンバンキング、モバイルバンキングという順番にサービスを拡大してきた。じぶん銀行は設立当初からモバイルバンキングを中心に位置づけ、その後パソコンバンキング、ATMへとサービスを広げてきた。これは他行にはない特色である。

親会社であるKDDIや三菱東京UFJ銀行とはどのように戦略を共有しているのだろうか。

KDDIの携帯サービスブランドであるauは、4000万契約の実績がある。またauWALLETは1800万契約、auスマートパスは1400万契約あり、これらの契約者を中心に口座を獲得している。

一方、三菱東京UFJ銀行に関しては、モバイルビジネスのノウハウをMUFGグループに還元することで、同行及びMUFGに貢献している。

マーケティング戦略としては、お客さま特性を「人生にアクティブで、スマートにふるまい、新しいテクノロジーに寛容で、進歩を取り入れたい人たち」と定義し、そのような「お客様をいつも近くでサポートし、ともに成長していく銀行」と自行を位置づけ、それに沿った商品・サービスを展開している。

スマートフォン戦略

冨加見氏は次に、じぶん銀行のスマートフォン戦略について語った。

原則は、全ての銀行サービスをスマートフォンアプリから利用できることである。その上でスマートフォン独自のサービスを提供する。たとえば、位置情報を活用した近隣ATM案内や、前述した「スマホATM」などである。

こうした施策が功を奏し、2010年には4%だったスマートフォン経由でのアクセスが、2016年末には、約8割にまで増えた。スマートフォンの個人普及率が2016年にようやく50%を超えたことを考慮すると、じぶん銀行のお客さまはスマートフォンを好むユーザーが他行よりも多いと考えられる。

スマートフォン戦略の中でも特徴的なものが、スマホATMと住宅ローンである。

スマホATMは日本で初めて、スマートフォンのみでATMでの入出金を可能としたサービスである。セブン銀行のみで利用可能だが、「お金を持たずに飲み会に行っても、セブン-イレブンで下ろして支払える」とお客さまからは好評だという。

操作は簡単で、アプリを立ち上げてログインし、アプリ側でATMボタンを押し、メニューから出金を選択して金額を入力する。続いてATM側の取引開始ボタンを押すと、ATM画面にQRコードが表示される。それをスマートフォンで撮影すると、スマートフォンに番号が表示され、その番号をATMに入力すると紙幣を受け取ることができる。

住宅ローンの手続きは通常はかなり複雑で、多くの書類や印鑑を必要とするが、じぶん銀行ではスマートフォンだけで契約まで完結することができる。手続きは非常に簡単で、3ステップで完了する。まずスマートフォンのマイページから仮審査を申し込むと、メールで審査結果が送られてくる。仮審査に通れば、次はスマートフォンで本審査の申込書類を作成し、アップロードする。早ければ2~3営業日で審査結果が届く。審査に合格していれば、スマートフォンから契約手続きをする。

こうしたスマートフォンへの取り組みの結果、2013年6月には、スマートフォンを中心としたビジネスモデルが高く評価され、アメリカの金融業界団体BAIから、邦銀では初めて「革新的ビジネスモデル特別賞」を授与された。

その他、2015年3月にはアジア地域の銀行専門誌「The Asian Banker」から「ベストビジネスモデル賞」を、2017年3月にも同誌から「最優秀ネット銀行賞」を受賞している。

CRM戦略とじぶん仕様プロジェクト

では、じぶん銀行のCRM戦略とその根底となるビッグデータ活用とはどのようなものだろうか。冨加見氏は以下のように解説した。

CRM戦略の根本は、お客さま一人ひとりに最適なタイミングで最適な情報を届けることである。これを同行では「じぶん仕様プロジェクト」と呼んでいる。

モバイル銀行に限らず一般的に、銀行の口座を作っても使われていないケースが多い。そこで、じぶん銀行では口座を作って頂いたのち、お客さまとの関係性を深めていく戦略を実行している。

まず口座開設後、少しずつアプリを使ってもらうように促し、関係を深めてファンになってもらう。関係を少しずづ深めていきながら、金融商品をご利用頂く。最終的には、複数商品を利用していただき、お客さまにとってなくてはならない銀行に位置づけてもらう。関係を深めるのに欠かせないのがOne to Oneマーケティングを実現するCRM施策なのである。

CRM戦略を支えているICT基盤がTeradataのDWHである。

DWHには各商品の取引やウェブサイトの行動データの取込を行い、一人一人のお客さまの取引や行動を分析できる仕組を構築している。データを分析するだけではお客さまに届かないので、業務部門側から条件抽出したお客さまに、直接コミュニケーションを取る機能を開発した。

じぶん銀行は、お客さまが必要な情報を必要なタイミングで提供するコミュニケーションを目指している。お客さまとの関係性を深めることで、より多くのお客さまにファンになって頂き、最終的に事業者としての利益が得られるという考え方だ。その実現のためにもCRM戦略は欠かせない。

モバイルOne to Oneマーケティングの実際

では、具体的にスマホアプリで、お客さまとどのようなコミュニケーションを取っているのだろうか。

スマホアプリのメイン画面をタイムラインと呼んでいる。タイムラインの一番上には最新情報を表示、以下時系列の降順に情報が並ぶ(FacebookやTwitterと同じイメージ)。入出金情報は目立つようにオレンジ色で表示しており、その合間にお客さまに伝えたい情報が差し込まれる。

タイムラインを下方向にスワイプすると、上のほうに未来の予定が表示される。たとえば、定期預金の満期日や住宅ローンの返済日、クレジットカード引落予定日などである。

単純に同じ情報をどのお客さまにも同じように出すのではOne to Oneマーケティングにならない。運用サイドで議論して、どういうお客さまにどういうメッセージを出すべきかを常に検討している。

たとえば、給与振り込みがあれば「お疲れさまです」メッセージを、元旦には「あけましておめでとうございます」。あるいは、母の日のアラートをギフト情報と一緒に送るということも考えられる。同行の取引に直接つながらなくても、スマホアプリに頻繁にアクセスするきっかけになればいいという考え方だ。

他にもスマホアプリには面白さ、楽しさを感じさせる機能を用意している。

たとえば「お取引サマリ」という入出金の推移をビジュアルに表示する機能がある。お金を貯める楽しさを感じてもらうためだ。あるいは使いすぎたという実感も味わってもらえる。同様のものに、外貨預金の損益状況の推移をグラフィカルに見る機能もある。

また、インタラクティブな機能としては、ワンクリックアンケートがある。週替わりでお金にまつわるアンケートを実施。アンケートに答えると、回答率をすぐに見ることができる。お客さま側も見て楽しく、同行もより深くお客さまのことを知ることが出来る。

「みんなのマネー事情」という画面では、年代・既婚/独身・子供有無・賃貸/持ち家などの情報を入れていくと、同じような条件の人がどれぐらい資産を持っているか表示される。お客さまには気づきがあり、じぶん銀行にとっては入力情報から最適な提案が可能となる。

冨加見氏は、「じぶん仕様プロジェクトの本質は、お客様が使えば使うほど、当行がどんどん役に立つ存在になれるということ。使ってもらえれば、一人ひとりにあった情報を出していくことができ、また当行が目指しているものも知っていただける。つまり、お客様とのより良いコミュニケーションをICTで実現しているということだ」とまとめて、講演を終えた。

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