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【TU-12】ロシア連邦貯蓄銀行の分析エコシステムの現状と将来|ロシア連邦貯蓄銀行


【Teradata Universe Tokyo 2017イベントレポート】

先進的な企業の取り組みとして、スベルバンク(ロシア連邦貯蓄銀行)のゲナディ・シロフ氏とテラデータ・ロシア インダストリーコンサルタント オレル・クズメンコから、「ロシア連邦貯蓄銀行の分析エコシステムの現状と将来」というタイトルで、スベルバンクのデジタライゼーションによる改革についての紹介があった。

シロフ氏は、7年間スベルバンクでエンタープライズDWHプログラムの管理を担当してきた。現在は同行のデジタル・エコシステムの構築を担当している。クズメンコは8年以上スベルバンクをサポートしている。

スベルバンクについて

スベルバンクは、ロシアの最も古い銀行で1841年に設立された。ロシアでは最大規模の銀行で、同国の銀行資産の3分の1を所持し、業界全体の純利益の半分を稼ぎ出している。

法人融資、リテール、担保融資、クレジットカード残高など様々なマーケット・セグメントで1位のシェアを誇る。ロシアの成人1人が1つのアカウントをスベルバンクに持っている。支店網もロシア最大だ。また中・東欧でも最大の銀行であり、世界ランキングは51位である。

スベルバンクは、銀行業務をより利便性の高いものにしようとしており、そのためにインターネット、オンライン、スマホアプリ、モバイルバンキングといった様々なチャネルを持っている。世界レベルで見ても、ATMとSST(Self Service Terminal)の数は最大級といえる。

クリミア半島の統合の影響で、ロシアは2014年にEUとアメリカから経済制裁を受けた。スベルバンクの事業も困難に直面するはずだったが、2016年度の自己資本利益率は20.4%とJPモルガンやゴールドマンサックスやバンクオブアメリカをしのぎ、純利益成長率は143%、株価上昇率は71%。時価総額はロシア企業の中でも最大級となった。危機を乗り越えるだけの体質を備えていたのである。

スベルバンクにおける現在の分析環境

シロフ氏は、この10年間のスベルバンクの歴史を振り返る。

10年前、スベルバンクのニックネームは「象」だった。「大きくてゆっくりで複雑な組織」という意味だ。重さに耐えきれずいつか崩壊すると考えられていたのである。ゲルマン・グレフ元経済開発貿易大臣が頭取になり、2008年から改革に着手した。大方針は全てを一元化することだった。マネジメントレポートをはじめとするマネジメントの一元化、業務オペレーションの一元化、ビジネス・プロセスの合理化と統一、そして何百と存在するITシステムと何千もあるデータ・インスタンスの統合。

マネジメントレポーティングの一元化のために、EDW(エンタープライズデータウェアハウス)の構築を推進した。同時に、戦略的なプログラムも実施された。バックオフィス機能の統合、コア・バンキングシステムの一元化、さらに新しいアプリケーションとしてCRMやERPを導入した。EDWの規模としては、世界的に見ても最大クラスであり、範囲も広い。

6年間で、EDWはスベルバンクのアナリティクス・エコシステムの中核的な要素となった。いくつもの重要なビジネス・プロセスがEDWに依存している。

オレルが、アナリティクス・エコシステムの構成について説明する。

オペレーショナル・データストアはOracleで構築している。EDWはTeradataで構築。ハードウェアは6750Hでノード数は38+19。いくつかのサブシステムも稼働している。ETLはINFOMATICA、レポーティング・サブシステムはSAS、BIツールとしてはSAP BO、QLIK、MS SSASが稼働している。また、データ・ディスカバリーにはHadoopを用いている。

トータルの顧客データスペースの容量は1PB以上になっている。

再びシロフ氏がビジネス・システムについて説明する。

MIS(Management Information System)は、毎月の収益を計算しレポートする。1億1千万のリテール顧客の収益を計算し、商品、チャネル、支店、ATMおよび銀行POSごとの収益性まで分かるようになっている。バーゼル2(自己資本比率規制)に対応した自己資本比率の計算も行える。IFRSシステムでは、引当金繰入額の計算ができる。ターゲット・マーケティングは、リテール顧客向けのキャンペーンシステムで、7500万人の顧客がターゲットとなっている。

その他、資産と負債の管理、金利リスクと流動性の管理などが、スベルバンクのデジタル・エコシステムで可能となっている

金融業界における課題と動向

続いてシロフ氏は、金融業全体の動向について説明した。

1950年から2005年にかけては従来型の銀行業務が発展してきた。1950年代にクレジットカード、60年代にはATM、70年代には電子取引、80年代にはデータストレージと高度なITシステム、90年代にはインターネットバンキングが登場した。この60年間で金融の技術インフラができ、現在も日々使われている。金融サービスがアナログからデジタルへ移り変わった時期と総括できる。

2005年から2015年にかけては、FinTech企業が登場した。小企業が参入できなくなっていた金融業界に、インターネット・テクノロジーを持つスタートアップ企業が参入してきたのだ。

2015年からは、デジタル・エコシステムの時代となっている。この時代は2025年ぐらいまで続くだろう。多くの顧客を持つ企業がエコシステムを構築し、その企業を中心に、新たなサービスやプロダクトが広がりつつある。エコシステムを構築する企業は、高度なITテクノロジーを持ち、蓄積してきた膨大なデータから新たな価値を引き出そうとしている。

シロフ氏は、2つの経済モデルがあると言う。従来型は、商品・サービスの提供者と顧客の間に多数の仲介者がいた。新しい形態はエコシステム・モデルで、仲介者はエコシステム実現者1つだけとなる。

今後、従来型はエコシステム・モデルに進化していく。エコシステム・モデルは商品やサービスを提供するのに1つの事業体を介するだけなので、迅速でコストもかからないからだ。

スベルバンクは、エコシステム実現者を目指す。その暁には、金融サービスだけでなく、その他の商品やサービスの提供も必要となる。金融サービスは事業全体の一部となり、非金融型のサービスを始めることになるだろう。

スベルバンクの構想では、Eコマース、不動産、B2Bサービス、ライフスタイル、Eヘルス、通信などの分野がエコシステムでカバーし、収益性も高い業種業界として挙げられている。たとえば、住宅購入予定者と不動産業者と住宅販売代理店をつなげて、この全体をスベルバンクがサポートする。住宅ローンの申し込みから取引登録まで、全てカバーする。また、Eコマースでは、大企業に電子商取引プラットフォームのプライベート・バージョンを提供することになる。

テクノロジー・プラットフォームとデジタル・エコシステム

では、エコシステムを構築するためには何が必要だろうか。シロフ氏は、顧客、プラットフォームおよびテクノロジー基盤の3つだという。

スベルバンクには、1億1千万のリテール顧客と150万の法人顧客がいて、そこから毎日膨大なデータが集まってくる。顧客とデータについてはこれで十分だろう。

プラットフォームの構成要素は大きく、以下の7つとなる。

  1. インフラストラクチャー:全てのシステム基盤

  2. プロダクト・ファクトリー:新しい商品を作るための基盤

  3. プロセス・デザイナー:新たなビジネス・プロセスを作り出す基盤

  4. API:他のエコシステム参加者にサービス、データおよび顧客へのアクセス機能を提供

  5. フロントエンド:様々なエコシステムの参加者の統合と新しいサービスの提供

  6. 意思決定システム:アナリティクス、AI等で自動的に意思決定する

  7. データ・ファクトリー:データを扱うための基盤

テクノロジー・プラットフォームの一部としてのデータ・ファクトリー

下図は、データ・ファクトリーの論理的なハイレベル・アーキテクチャーを示している。

Teradata EDWはユーザーおよびアプリケーションにとってFACTの源泉となっている。

Hadoop環境の役割が広がってきた。元々のデータ・ディスカバリーに加えて、アーカイブや運用システムのレプリカを格納するようになった。

統制および管理(データ・ガバナンス)レイヤーでは、リソース・マネジメント、アクセス・モニタリング、データ・クオリティ管理、メタデータ・マネジメント、セキュリティなどを担っている

データ・ファクトリーは、2つのものを支えている。

1つは、銀行業務そのもの。マネジメント、規制レポート作成、リスク管理、キャンペーン実行、資産・負債管理、魅力ある商品開発。これらを実現するために、完全なデジタル・ビジネスへの変革が必要であり、データ・ファクトリーはその変革の源泉となっている。

もう1つは.アナリティクスの基盤として、様々な活動を支えている。たとえば、ある商品の金利が変わる場合にそれがスベルバンクの財務状況にどう影響するかが問題となる。ローン契約の返済期日は、繰り上げ返済があるから、返済の終了日を表しているわけではない。このようなことを考慮して、収益や資産を予測しなければならない。カスタマー・インテリジェンス、不正検知といった領域も同様だ。

シロフ氏は最後に、「スベルバンクのニックネームは象だった。多くの人は重みに耐えられずに崩壊し死滅するだろうと思っていたが、変革プログラムによって、象は踊れるようになった。今は全力で先のほうを走っている」とスベルバンクの改革を振り返った。

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