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商品、訴求ポイントを改善する - 1


商品属性に対する支持

この分析では、商品購入結果から、商品が持つ幾つかの側面のどこに関心が高いかを理解しようとしています。商品として火災保険の契約を対象にして、縦軸には、基本パッケージの商品のみ、基本+地震災害時の特約オプション、そして基本+家財補償のオプション、そしてこれらを全て含めたフルパッケージの商品をリストアップしています。ここからそれぞれの商品、特に地震補償と家財補償の経時傾向が明らかになります。ここでは地震補償をオプション契約する顧客が増加傾向にあり、家財補償に対しては、さほど支持が高くないことが伺えます。このような傾向に影響を与えるのは、社会的要因(大きな地震が発生して社会的不安が比較的増加した等)や、競合要因(競合他社が値下げ/値上げした、ある補償を基本パッケージの中に組み込んだ等)です。そしてこのような要因の積み重ねにより、消費者はどのような価格帯を求めるか、そしてどのような機能(ここでは補償の対象)を求めるかが異なってきます。

また、これに対して自社が行なうべき対処を考えるとき、その企業が期待する収益性(そしてその裏に存在するリスクのボリューム)をどのように捉えるかという点と、所与の要件として提示された社会的要因と競合要因を考慮し、自社商品を顧客にとってもっともアピールしやすい位置におき、このポジショニングによって他社に優位に立たなければなりません。この分析例において競合が無い、もしくは他の目的性において競合よりも優位に立っているという前提において、地震補償は追加収入の貴重な手段です。しかしながら競合の動きによって、契約数の鈍化が発生するのであれば、地震補償に対する費用を値下げしたり、基本パッケージの中に組み込んだりすることも検討しなければなりません。また、家財補償に関しては余りニーズが無いため、このままオプションにしておくべきかもしれませんし、さらに契約者のプロファイルを分析することも必要かもしれません。陳腐なアイデアかもしれませんが、例えば敷地面積 xxx平米以上の大邸宅の場合にこのオプション契約が多いことを発見できたのであれば、大邸宅用の商品パッケージも検討に値することでしょう。

価格に対する理解

商品やサービスに値付けされる価格は、商品が持つ属性としても大きな位置づけを有しています。商品の属性や、それによって達成される目的は多々存在しますが、これらの多くは、顧客に対して何を与えるか、どんな価値を提供するかを意味するものであり、顧客にとってそれらの多くはメリットを感じるために存在するものです。これに対して価格は、顧客にとっては金銭的支出であり、何らかの形で努力して獲得した利益を支払うという行為を意味する属性です。ビジネスをその根底で捉えれば、それは取引であり、販売者と購入者がそれぞれ等価交換する行為、もしくはお互いにとって利益が見込まれる財と財を交換する行為です。物々交換がその起源であり、貨幣はその中間媒体として機能することによって、社会的な意味を増大させてきました。そして貨幣によってあらゆる財(物財、サービス財、そして個人が持つ労働時間と才能という財)が貨幣価値の中で捉えられるようになり、その希少性や重要性に基づいて変化する財の持つ価値を捉え続けることが可能となったのです。

企業はこのような中で、本来は個人がなすべきことを代替することによって発展してきました。遠い場所から食料品や衣料品を生産して運び、情報を運び、人を運び、お金を運ぶことがそのビジネスの発端であり、これを提供にすることによって個人の生活を便利にすることがビジネスの一側面です。そしてその反対側に存在する側面は、それに対して対価を得ることにあります。貨幣が大きな価値尺度として捉えられる中、企業はその対価を、貨幣で要求します。数ある商品の属性において、価格は、唯一顧客に対して「何か」を強いる性質を持つのです。

そして価格には、現実的に消費者が得られる価値と様々なギャップが存在します。プリミティブな市場(いちば)において、売り手と買い手がお互い探り探り価格交渉をすることからもわかるように、モノの価値はその時と場合によって変わり、またそれを売り買いする人によっても変わります。このような価値の可変性に対して、現代的な企業が持つ価格決定構造と、その一元性はあまりに柔軟さに欠けています。もちろんそれによってもたらされる効率性と、公平性はこのようなデメリットを超えて遥かに有益であり、それこそが一元的な価格や、それによってもたらされる市場価格の持つ重要な意義でもあります。

しかしながら、一方で固定化された価格が逸してしまうビジネス機会も大きなものです。特に日本のように市場のパイそのものが大きくならず、一方で市場におけるプレイヤーがたくさん存在し、結果的に消費者が益々優位に立ち、消費者の多様性が許容される社会においては、益々逸失されるビジネス機会の総量は大きくなることでしょう。もちろん一元的な価格設定を捨てる必要はありません。これを補う形で、比較的多く散見され、かつその価格設定が合理的であるケースに対して多元的な価格設定を提供できれば、逸失が危惧されるビジネス機会の幾つかを拾い上げることが可能となります。また、多元的な価格設定にまで至らなくとも、消費者が感じる価値に合わせて一元的な価格を微調整し続けることができれば、それだけでも大きなビジネスチャンスの逸失は避けられるはずです。

こちらの分析例では、カットソーの商品サブクラス毎に、価格と販売数量、販売金額、荒利率、そして荒利金額を表示しています。縦軸の品揃え構造を見ると、9,800円、12,800円、そして 19,200円の価格ポイント毎に品揃えされており、9,800円のラインは値下げ処置されていることが見て取れます。当然ながらこの 3つのラインはそれぞれに異なる商品価値(デザインや生地、ブランド等)であり、高い価値を有する商品は当然ながら高い価格設定が、それなりの価値を有する商品にはそれなりの価格設定がされています。このケースにおいて、消費者はこの売場の品揃えの中で、価格よりも大きなファクターとして商品価値を理解したため、販売が 12,800円、19,200円の商品に集中したことがわかります。これらの商品は上品な素材を利用していたのかもしれませんし、シルエットが秀逸だったのかもしれませんが、とにもかくにも 9,800円の商品は見向きもされなかったことは分かります。ここで、サブクラスのカラムを取り除き、価格ごとに集計しなおしてみます。

さらにここから、販売数量と荒利金額の関係を明らかにするため、この 2つの指標をグラフ化しました。ここから、販売数量上では 12,800円の商品が大きな貢献度を持っていること、そして荒利金額においては、19,200円の商品も重要な位置づけを占めていることがわかります。このラインの販売数量は 12,800円の商品に比べて少ないにも関わらず、同等の荒利金額を稼いでおり、荒利率も他に比べて好ましい結果であることがわかります。ここから、少なくとも追加投入や次シーズンにおいて 9,800円のラインを投入する必然性は、せいぜい見せ筋としての価値以外には無いことが分かります。その分のスペースと商品投資をより価値の高い、そして価格も高い商品に割いたほうが賢明であると想定されます。

また、19,200円のラインに関しては、12,800円ラインの販売数量と、現在の荒利率から鑑みるに、顧客心理として 12,800円に近づけたほうが顧客の感じる価値に近しいと見て取れます。例えば 16,500円から 17,000円程度の価格帯に抑え(荒利率45%超)、販売数量を拡大し、荒利金額を獲りにいくことも検討すべきテーマであると言えます。

もう1つ、価格分析に関する例をご紹介します。この分析では、あるインターネットサービスの価格を分析しています。自社の料金設定と、ベンチマークの対象となる競合他社の料金を比べ、それによってどのように顧客数の増加と離反が発生したかを見ています。これを見ることによって、消費者が自社のサービスと、競合他社のサービスをどのような関係性で見ているかを透かしてみることが可能となります。レポートの縦軸には自社の月額料金と、競合他社の月額料金を置いています。そして[競合価格比]として、競合他社の価格を分母に置いた際の自社の価格リフトを表示しています。数値が高ければ、競合他社よりも高い金額設定がなされていることを意味します。

そしてこの価格帯の設定日数の長短を排除するため、1日当たりの契約数、離反数(契約解除数)、そしてこの足し引きである顧客数増減を見ています。ここから見るに、価格比が 1.14 から 1.04 に下がった段階で契約数が 2万件増加し、反対に離反数は 1万件以上減少する効果があることが分かります。一方で、競合他社の価格をくぐらせても、さほどの効果が見られないことも分かります。ブランド、サービス、機能等の価格以外の属性が効いており、同等価格であれば好ましい結果を得られることが見て取れ、また価格をこれ以上下げても効果は見られないことから、現段階ではイーブンの価格設定で充分に伍していけることが理解できます。

また、離反してしまった顧客には、どのような利用特性があったのか、契約解除の際にどのような理由を伝えてきたのかを分析して、価格、もしくはその他の商品属性を改善することも必要となります。離反が想定される顧客のプロファイルが分かれば、同一プロファイルを持つ離反予備軍に対して、引き止めのための何らかの方策を講じることも可能かもしれません。単純にこれらの顧客に対してのみ利用料金の割引オファーができればシンプルですが、それができなくとも他のインセンティブオファーを提供することによって顧客を維持できるのであれば、新たに顧客を獲得しなおすよりも遥かに容易な施策であると言えます。

このような分析から、消費者の価格に対する意識(高い/安い)は、比較すべき対象としての競合他社、自社商品のそれまでの価格設定、そしてそれによって得られる対価としての商品属性や達成される目的性に大きく依存していることが分かります。このような分析結果によって得られるデータはあくまでも結果であり、この背後に存在する顧客の支持、不支持を類推し、さらにその背後に存在する消費者の価値観念とその比較対象を理解し、それに合わせて価格を調整することが、ビジネス機会を最大化するための 1つの手法となります。