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商品、訴求ポイントを改善する - 3


リコメンデーション:提案商品の個別化

リコメンデーションの適用、特に提案商品を顧客によって変更する場合には、自社にそれだけの品揃えを有していなければなりません。これは特に再販型で集約的なビジネス形態においては適用可能であり、効果的な手法と言えますが、自社で商品を開発し、そしてそのラインナップが数多くない場合には、限界があります。このとき可能なアプローチは商品そのものを改善するか、商品の機能や属性を分解し、組み立て型で提供することによって、顧客毎に適切な商品スペックを提案する手法を採用することになります。この際、商品属性のある一部分、もしくは複数の部分を層化し、ある基準に基づいてどの層をどの顧客に割り当てるかを決定し、提案商品のスペックを規定します。これをマスカスタマイゼーションと呼びますが、例えばこの層化のレベルが細かくなれば細かくなるほど、オーダーメイドに近い形をとることになります。

パソコンを例にとった場合、量販店であれば過去の購買履歴からどのパソコンブランドを案内するべきかを決定可能ですが、パソコンメーカーにはそれはできません。自社ブランドのパソコンを売るのが目的なので、これは当たり前のことなのですが、それでも顧客の細かなニーズの違いに対応しようとするときには、メモリーや CPU、ディスク、ペリフェラル、ソフトウェア等を組み立て式にして、インターネットサイト上で仮想的に組み立てられるようにして、顧客毎に対応することになります。そしてそれで顧客ニーズに対応できない場合には、モデルチェンジを行なうことになります。洋服、例えばスーツを見た場合、通常のサイズ分けの中から選ぶのが既製服であり、いくつかのパターンとサイズ分けに基づいて仕立ててもらうのがセミカスタム、採寸をしてもらい、完全に生地から仕立ててもらうのがオーダーメイドとなります。

ここで、カスタマイゼーションの度合いと、顧客から得られる情報の量には比例関係があることが読み取れます。顧客に対してよりフィットする商品を提案しようとすれば、顧客に対してより深い理解を有する必要があるのです。前述のパソコンの例であればインターネット、特に顧客が情報をインプットできるインターフェースがこれを実現するためのベースにあることが分かります。スーツの場合には販売員が顧客の話を聞きながらそれをスペックに落とし込み、最終的な型をとることになります。顧客の希望を直接聞かない場合にも、顧客の情報は不可欠です。書籍サイトによくあるリコメンデーションは、その場で顧客が閲覧した書籍に関連性の近い商品を提案します。またこの関連性は、過去に他の顧客が購買した複数の商品間の関係を積み上げてモデル化しているものです。もちろんそれがその個人にとっての関連性であるとは限らないのですが、近似の嗜好性を持つ限りにおいてはフィットの可能性が高まります。この点において、過去の個人の購買行動が理解できれば、より的確に提案するべき商品、提案しても意味の無い商品を導き出すことも可能となります。そして商品そのものだけではなく、商品案内時に行なうメッセージの個別化、案内すべきチャネルの個別化、案内すべきタイミングの個別化といった、あらゆる点においてその顧客に対するフィットを狙うためにも、その情報を利用することが可能です。

例えば、ある百貨店が春夏の商品を投入するとします。ブランド、カラー、スタイル等に基づいて案内すべき商品を理解することも可能ですし、案内チャネルも電子メール、ダイレクトメール、いつも接客している販売員からの電話と、それぞれの顧客毎に高い反応を期待できるチャネルは異なるはずです。高頻度で来店している顧客には、わざわざ案内する必要も無いかもしれません。案内すべきメッセージやタイミングに関しても顧客毎の嗜好性が判断に用いられるはずです。例えば価格反応度が低く、それよりも欲しい商品はなんとしても手に入れたいと思っている顧客であれば、シーズンインの、カラーサイズ含めた在庫が豊富にある段階で案内すべきです。逆に価格反応度が高く、通常価格で購入するなんて信じられないと思っている顧客に対しては、シーズンエンドのセールタイミングで案内するのが望ましいかもしれません。また、場合によってはこれらの顧客群向けに特別の価格インセンティブを提供することが反応を高める要素となることもあるでしょう。これらを判定するための基準は全て、過去における顧客の購買行動から導き出すことが可能です。重要なことは、これらの情報を適切に用い、それを個別化に活かすことであり、合わせてそれが正しいフィットをもたらしているのかを実施後に評価することです。

こちらのレポートでは、電子メールチャネルで案内を行なった、関東顧客向けの旅行商品案内の評価分析を行なっています。ゴールデンウィーク向けに案内したこのメッセージでは、ほとんどの顧客に対しては個別化をせずに、売れ筋の商品パッケージを案内していますが、一部の顧客に対しては過去の旅行商品購入傾向に基づいた個別化を行い、このメッセージ内容ごとに案内顧客数とレスポンス顧客数、そしてレスポンス率を表示させています。このような案内の背景には、4つのメッセージ内容のうち、それぞれの顧客にどのメッセージ内容を適用するかという点と、実際にどんな商品を電子メールのトップメッセージに据えるかという点が存在します。もちろんアプローチとしては、全ての顧客に対して何らかの個別化処理を行なうという方法も考えられます。しかしながら一方で個別化処理を行なうに充分な顧客知識が無い場合には、個別化をしたところで、有意な個別化には結びつかず、それは結果的に高いレスポンス率をもたらしません。結果的にこの個別化処理は、2倍から 3倍近くのレスポンス率を獲得していますが、顧客に対する知識を充分に保持していない場合、このようなレスポンス率は獲得できないはずです。

仮にここでは合計 6万人に対して案内を実施していますが、知識(例えば過去 3年間、ゴールデンウィークに旅行しているが、毎年関東近郊での旅行をしている顧客を識別する能力)が無いままに「都心 300km温泉地」の提案を行なっても、このようなレスポンス率は得られません。それどころか案内する顧客を絞り込む術すらないという事態に陥ります。顧客に対する理解が進むにつれ、一般的な案内から、近場を好むのか、それともより遠く、非日常的なことを旅行に求めるのか、同じ沖縄でもビーチリゾートを求めるのか、それともグルメツアーを求めるのか、そして同じビーチリゾートでも去年と同じところに行きたがるのか、それともちょっと違うビーチを案内して欲しいのかといった詳細が理解できるようになります。このような詳細に対して理解を深め、それをリコメンデーションモデルに適用することによってはじめて、リコメンデーションモデルは意味をなすようになり、レスポンス率にも反映されることになります。

このレポートでは、インターネットサイトで適用したリコメンデーションモデル毎に、どのような効果の違いをもたらしたかを表示させています。縦軸に指定しているのは 2つのリコメンデーションモデルと、評価のためのリコメンデーション無しの場合の、合計 3つです。これに対して買上バスケット数、そしてバスケットあたりの平均買上点数、バスケットあたりの平均買上金額の 3つの指標を見ています。仮にこれらのモデルをそれぞれ同一期間(例えば 4ヶ月づつ)適用したと仮定すると、バスケット数の相違は、サイト訪問から購入に至る流入転換率を向上させていると見ることができます。また、買上点数、買上金額の大きさは、ある商品の購入に際して、一緒に購入してくれる商品の多さ、そして顧客の支出額の大きさを表しています。つまりこれらの数字の高さが、クロスセリング手法としてのこのモデルの優秀性を表しています。例えばこのケースを音楽 CDの販売サイトであるとし、リコメンデーションに利用できるスペースが CD3枚分であるとします。モデル#13が[過去に購入した CDが含まれるジャンルにおける、販売トップ 3を案内する]であるとし、モデル#52が[推奨商品から顧客が既に購入している CDを除き、さらに同じミュージシャンの販売トップ3を案内する。ただしこの条件に合致しない場合はモデル#13を適用する]とした場合、買上点数における CD 0.9枚分の乖離(5.5点 - 4.6点)がこのモデル間の違い、優秀さを示しています。

このようなモデルは、何も数式モデルやルールモデルに限りません。人的資源チャネル、つまり人間が持つ提案の方法やアプローチの仕方に関しても評価可能です。例えばこちらの分析では、ある百貨店の紳士服売り場における販売員ごとに、先ほどの 24A と同様の指標値を適用して評価したものです。優秀な販売員は接客スキルだけでなく、顧客の外見的特徴を判断し、どのようなシーンで衣類を着用しようとしているかを聞き出し、さらにその販売員が持つセンスを利用していくつかの商品を組み立て(コーディネイトし)、提案に活用しています。そのロジックの一つひとつを整理し、モデル化していけば数式モデル、ルールモデルに行き着くのかもしれませんが、そこまでしなくとも、例えば販売員間で勉強会を開き、優秀な販売員によるコーディネイト例を共有し、全体での底上げを図ることも有用であると言えます。

もちろんこのような取り組みを適切に運用していくためには優秀な販売員、そしてそのノウハウの共有に対しては適切な報酬を以って報いなければなりませんし、ある一定レベル以上は販売員それぞれのセンスも認めなければなりません。また、現状の売り場在庫は制約条件となるため、コーディネイトの幅も限られることも前提の上で考えなければなりません。そして顧客が許容可能な支出の最大幅を鑑み、あまりに売り込みすぎることによって顧客に疎ましがられたり、二度と来店したくないと思わせたりしない程度に接客しなくてはなりません。

個別化の適用は、時間とお金をかけて一人ひとりのニーズに丁寧に対応すれば、実現可能です。「分からないことは顧客に聞く」、これは最も間違いが少なく、フィットのための最善の手段であり、この手法は古くから変わらないものです。ただし、現代の企業が接する顧客は数百万、数千万に及び、この一人ひとり全てに対して時間とお金をかけていては採算が合いません。テクノロジーを利用することによってこのコスト構造を改善し、一方でフィットのレベルを一定以上にするのが、現代的な個別化の手法であると言えます。この例には前述したパソコンのインターネットサイトも含め、以下のようにいくつか考えられます。

1. (主にセルフサービス型のインターフェースを用い)個別化に利用する情報を顧客に入力させ、ここから得られた知識、もしくはその情報をそのまま個別化に利用する 2. 過去の取引/接触履歴等から嗜好性を理解/想定し、これをモデル化する 3. (収益性を事前に理解し)収益性を伴う顧客に対してのみ、時間とお金をかけて、 アナログかつハイタッチな個別化対応を行う

特に 3.に関しては、発生するコストと期待できる効果のバランスを考慮した、効果的なアプローチであると言えます。主に人的資源チャネルを用い、顧客に対して丁寧な対応をすることによって、数多くの情報(容易にデジタル化/コード化できないような情報も含めて)を取得し、それに基づいた対応を行うことが可能となります。これは最もレベルの高い個別化のアプローチであり、フィットを画策する上でこの上ない確度を持つアプローチです。一方でこのアプローチはコストがかかり、時間がかかり、故に顧客の全てにこのアプローチを適用することはできません。しかしながら、テクノロジーによってこのアプローチを実施すべき顧客を選り分けることができれば、このアプローチによって発生するコストを、遥かに凌駕する収益をもたらす顧客を識別することが可能となり、収益性と重要顧客に対するサービスレベルの維持が実現できます。従って、顧客毎の収益性そのものは個別化とは関係ありませんが、このようなアプローチをするにあたって、収益性は特に有用な基礎情報となります。


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