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情報統合の必要性


外部環境の変化に対応しつつ効果的な経営管理や業務改革を行うためには、情報統合が必要です。情報を一箇所にありのまま蓄えて活用するエンタープライズ・データウェアハウス(EDW)は、アプリケーション中立性、サブジェクト指向という特長を備えることで、業務オペレーションの全体最適を支援し、変化への即応力を提供します。

企業経営における情報統合

ここでは情報統合の必要性を内外の環境要因と照らし合わせて解説します。

外部環境の変化に伴って必要とされる施策

企業を取り巻く外部環境がめまぐるしく変化する昨今、企業経営も変化に合わせた舵取りが必要とされています。情報管理の重要性が高まるなか、外部環境の変化で特に顕著な傾向として「内部統制の必要性」、「経営スピードの変化」、「顧客動向の変化」、「新技術のビジネスへの応用」があげられます。これらの変化に企業はどう対処すべきなのでしょうか。

先ず「内部統制の必要性」に対処するには、企業情報のガバナンスを確立する必要があります。日本版 SOX法の導入を契機に、多くの企業でガバナンス・内部統制の動きが活発化しています。セキュリティを確保し情報を保護するためにも、IT を活用し情報やデータに関する情報ガバナンスを確立した上で、内部統制を強化する体制が求められています。

「経営スピードの変化」に対処するには、リアルタイム情報を整備する必要があります。意思決定のスピードが加速している現状では、経営者から現場担当者まで全ての階層に、必要な情報を市場や環境および個々の業務スピードに合わせて提供し、ビジネスを支援していかなければなりません。

また、「顧客動向の変化」に対処するには、顧客価値を迅速に把握し各セグメントに応じた的確な戦略立案を行わなければなりません。顧客動向の変化や顧客嗜好の多様化を察知するには、自社の実態と顧客に関する詳細かつ高度で柔軟な情報分析が不可欠です。

最後に「新技術をビジネスへ応用」するためには、膨大な情報を一元的に管理する方法を確立しなければなりません。商品物流や顧客動向、決済などの情報を企業レベルで蓄積する技術を駆使し、その情報を活用する仕組みが必要です。

以上を踏まえると、外部環境の変化に対する施策を実現する共通のアプローチは企業情報管理であるといえます。従来の情報管理と大きく異なるのは、その管理領域の規模、鮮度、精度、品質、情報の数や種類などです。高いレベルの管理要求が企業に寄せられているため、対症療法的な手法ではなく根本的な改革が必要とされます。

経営管理の視点からみた情報統合

企業が経営管理を実現する上では、従来の財務指標中心の経営管理とは別に、部門毎の KPI が企業全体の収益向上につながる仕組みを構築しなければなりません。その際、企業全体で経営管理を支援するシステム基盤が「情報統合」がなされた企業情報であり、この情報を拠り所にした戦略遂行が必要になります。

企業における最近の投資傾向を例にとると、これまでのコスト削減の取り組みから、「攻め」の投資へ戦略的シフトが起きつつあります。ここでは差別化によって競争優位を獲得する方向を決定する必要があります。また、企業の成長に適応できる業績の可視化環境を構築し、全社的で継続的な PDCAサイクルを確立しなければなりません。さらに外部環境の変化は収益に直接影響を与え、企業の組織形態に変化を要求します。そこでは、明細情報を基礎とする詳細な差異分析と、新しい組織体制下での円滑なオペレーションが求められています。

業務改革の視点からみた情報統合

業務改革の視点からも情報統合は有効に機能します。自社の業務状況や供給業者あるいは顧客に関する情報を統合して可視化できれば、現場に即した意思決定環境の実現が可能で、情報の分析による新たなビジネス機会の獲得にもつながります。

生産や物流の分野では、全社規模で需要を共有し在庫を把握するといった、業務に必要な情報の可視化が必須です。需要予測、在庫数量、リードタイムの情報を統合できれば、ボトルネックを把握することができます。

販売や営業の分野では、販促費の削減に伴う顧客満足度の低下を回避するため、顧客情報の一元化が急務です。顧客価値を迅速に把握し商品やサービスを開発するような、顧客価値創造の取組みが求められています。

戦略遂行のための実践的なアプローチは情報統合から

以上をまとめると、情報統合に求められる要件は、「全社で一貫したデータ」「明細レベルでの履歴情報」「迅速な情報提供」「変化・成長への対応」の 4点となります。

企業情報の統合レベル

環境変化に即応した経営管理や業務改革を行うために、情報統合が必要であることを説明しましたが、情報統合という概念はさまざまな捉え方がなされています。ここでその考え方を整理し、企業経営に及ぼす影響を見ていきます。

企業では多くの情報が日々発生し活用されていますが、情報の種類という観点では次の様な統合レベルが順にあります。

  1. 単一データ種類のみで構成。例えば売上明細データのみ

  2. 関連しそうな複数のデータ種類まで統合。例えば売上明細と商品マスターまで

  3. 企業内で発生するデータ種類を全て統合。組織、人事なども包括的に統合

  4. 企業外にあるデータ(外部の市場データや取引先データ)まで含めて統合

1. の単一データ種類だけの構成では、情報環境は機能しません。2. の関連しそうなデータ種類まで統合する構成は暫定的な実装段階でよく見られますが、情報の有機的活用を突き詰める過程で必然的に新しいデータを統合する要望が発生します。それが 3. の企業内で発生する全データを統合するデータウェアハウスの概念につながっていきます。4. の外部データ、取引先データまで統合するかどうかは企業によって見解が分かれますが、それらをも統合し日々厳しくなる競争環境を優位に導こうとする企業が現れ始めました。

また、どこにどのように統合するかという観点では、次の様な統合レベルが順にあります。

A. 2つ以上のシステムに集める B. 1つのシステム(1つの DASD)に集める C. 1つのデータベースに集める D. 1つのデータモデルに集める E. 正規化されたデータモデルに集める F. サブジェクト指向で正規化されたモデルに集める

A の 2つ以上に集める方式は、分散された情報を鳥瞰することが不可能なため意思決定用途には不向きです。B の 1システムに集める方式も、1データベースに収まっていなければデータの関連を紐解いて分析することは至難の技です。C の 1データベースに集められればそれが可能になりますが、1データモデルに統合されていなければ、データの関連を利用者が意識しなければならず使い難いものになります。結局、利便性を確保するためには D の 1つのデータモデルに集める必要がある、ということです。

E の正規化されたデータモデルに集める方式で、事実をありのまま蓄える、“One Fact in One Place” という概念が成立します。この統合レベルはデータの冗長度が排除されたアプリケーション中立という特長を持つため、多くのアプリケーションが同時にデータを共有可能な、全体最適を志向する理想的な環境がもたらされます。前述した多くのビジネス施策を同時に実現可能な情報基盤になるのです。

F のサブジェクト指向という概念は、同種データを 1エンティティにまとめるモデリング手法です。組織変更を例に、データを部門毎に別エンティティに割り当てる方法と、全部門に跨って 1エンティティに標準化して統合させるサブジェクト指向の方法を、柔軟性という観点で比べてみます。組織構造の変更時、前者ではエンティティの再定義が必要なため、該当エンティティを参照するアプリケーションを全て変更する必要があります。後者では、その際にもエンティティの再定義は不要で、アプリケーションの変更も少なく済みます。ビジネス環境では組織や商品体系、販売チャネルなどは頻繁に変更されるため、分析基盤もこれに追随する必要がありますが、この点で後者の方が優れているのは明らかです。別にサブジェクト指向のデータ形式は情報を履歴で管理し易くするといった特長も備えています。

以上で情報を一箇所に集中させる、統合の方法を概観しました。実際のシステム運用では、利用者が情報を参照する際に、データウェアハウスと利用者の間にデータマートを作る方式が見受けられます。しかしこの方法には多くの留意点があります。

  • 別途、サーバやデータベースが必要になる

  • 情報利用の迅速性が一時的に損なわれる

  • データウェアハウス内のオリジナル・データが変更・修正された際に一貫性が損なわれる。利用者にそのことを気付かせるために、特別な対応が必要とされる

  • 報共有に限界がある。データマートとデータウェアハウスの情報間で関連性を紐解いた分析ができない

このような、データウェアハウスからデータマートを作る際に効果的な方法は、仮想的なデータマートをデータウェアハウス内部に作るという方式です。オリジナル・データが変更・修正された際にデータマートも見かけ上自動的に更新され、上にあげた留意点を克服することが出来るのです。