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リポーティング ─ 事実を把握する


ソーシャルやアクセスログなどのオンライン・データと、実店舗やコールセンターなどのオフライン・データ。異なるチャネルから得られたこれらのデータを統合することによって、それぞれのデータを単独で分析するよりも高い価値が得られること、そして今までと同じ分析手法を適用できることを、前回までで示してきた。今回からは、実際の分析手法の一端を紹介していく。

リポーティング

最も基礎的なデータ分析の手法は、実際のデータをそのまま見ることである。取得したデータを把握したい切り口で絞り込み、縦横両軸に整形し、集約して表示する。また直感的な理解を促すため、グラフによって視覚化することもある。実際には、ビジネス・インテリジェンス、多次元分析といったツールを用いることが多い。

統合された顧客データを用いる場合、利用可能なデータの種類は非常に多岐にわたり、表示するリポートのバリエーションは無限大だ。ここでは統合顧客データを利用することによって可能となる、代表的な分析例 3つを挙げる。

顧客数の把握

図表1 は、縦軸に各チャネルに所属する顧客のセグメント、横軸には新規、既存、そして休眠顧客数を配置したものだ。縦軸からは顧客セグメントの重複、横軸からは顧客数ベースのフローとストックを一覧できるリポートである。

例えば「実店舗(AND)オンライン(AND)ソーシャル会員」は、実店舗とオンラインの両方の利用があり、なおかつソーシャル・アカウントがひも付いている顧客を意味する。新規顧客は直近一定期間内に会員登録した顧客、休眠会員は一定期間利用のない顧客と定義している。チャネル・セグメントの定義は企業が利用しているチャネルによって異なり、また企業によっては休眠ではなく、解約と言った方が適切な場合もあるため、適時、読み替えてもらいたい。

一般的に、複数チャネルでの利用がある顧客の方がロイヤルティが高いと言えるが、単独チャネルしか利用しない顧客も当然ながら存在する。ここではその分布を理解することで、各チャネルでの会員獲得、会員ケア、そしてチャネル間誘導の成否を確認することができる。また新規と休眠のバランスを見て休眠が多くなっていれば、顧客数が減少傾向にあることが明らかになる。そしてこれを前月や前年と比較することにより、会員数の伸び率も把握できる。各施策がどの程度顧客数の増加や離反阻止に影響を与えたかも理解することができるだろう。

接触数の把握

獲得した顧客に対して適切に働き掛けることによって、顧客から収入がもたらされる。

図表2 は、接触量について整理したリポートである。縦軸にはチャネルを配置し、横軸にはアウトバウンドとインバウンドの接触率を配置している。

企業はそれぞれのチャネルを通じて接触を行う。一方、顧客の側から企業のチャネルに接触してくることもある。オンライン・サイトの閲覧やコールセンターへの問い合わせなどである。企業から顧客への接触をアウトバウンド接触、顧客から企業への接触をインバウンド接触と呼ぶ。働き掛けとは結局のところ接触のことであり、そこでなされた提案のことだ。もちろん的外れな提案では意味がないが、提案量が少なければ顧客を動かすことはできず、収入にもつながらない。一方でインバウンド接触は、顧客からの関心のバロメーターだ。ここには当然、苦情のような接触も含まれるが、基本的にインバウンド接触の量は関心の量と言ってよい。

ここでは、有効な顧客数を分母に、一定期間内の接触回数を分子にとって、接触率という指標にまとめている。1人の顧客に 2回接触することもあれば、1度も接触しないこともあるだろう。そのため、さらに詳細を見ていく必要があるが、全体として接触量が適切であるかどうかがこれで把握できる。インバウンドのみのチャネルや、アウトバウンドに適したチャネルもあるため、適切な接触率はチャネルによって異なる。時系列での変化も合わせて把握するのが望ましく、例えば一定期間における eメールの接触量が過剰だという場合には、制限することが必要になる。

購買転換状況の把握

接触や提案がどの程度、購買や利用に結び付いたかによって、適切な顧客に対して、適切な提案を行えていたかどうかを理解できる。

図表3 は商品ごとに、商品ページを URL付きで投稿した数、商品ページを閲覧した数、最終的な購入数、そして転換状況を比較している。このリポートは、ソーシャルメディア、アクセスログ、そして取引実績という 3つのデータソースから形作られたものだ。これにより、ソーシャルでの波及効果、商品紹介ページのパフォーマンス、そして購買に至る流れを定量的に評価できる。

以上は形式としては単純なリポートだが、データが統合されていることによって、より包括的に顧客の状況をつかむことができている。

この記事は月刊 『アイ・エム・プレス』 (2013年5月号 Vol. 204)に掲載されたものです。


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