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車両稼働情報を活用したサービス化の取組


本記事は、Teradata Universe Tokyo 2019にて、日野自動車株式会社 情報企画部 松本 兼司氏に講演いただいた同名セッションの内容を再構成したものです。

日野自動車株式会社 情報企画部 推進グループ 主管 松本 兼司 氏

トータルサポートを深化するICTシステム

日野自動車の使命は、「人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献する」である。これは「良い商品」と「トータルサポート」の2つの側面から実現され、特にトータルサポートについてはICTの活用により深化することで、商品・サービスの質を高め、顧客に貢献することを目指している。

そこで2017年から大型トラック、中型トラックおよびバスに新規開発した車両通信機を搭載し、コネクテッド領域でのデータ活用によるサービス開発を始めた。



まず、Teradataを採用したデータ統合基盤を構築し、車両で発生するM2M(マシンツーマシン)データをリアルタイムに反映し、7日ごとにバッチで取り込んでいる。そして各アプリケーションに、オンラインとバッチの両方でデータ提供を行っている。7日×24時間で稼働させ、昼夜問わずに継続的なデータの取り込み処理と検索処理を実行している。また、①ステージング、②蓄積、③アクセス・検証の3つのTierに論理的に分割してデータを保持し、段階的なクレンジングを施しているという。

予防整備の実現へ

乗用車とトラック・バスとの大きな違いは、トラック・バスが生産財であることだ。使用年数は約12~13年、年間走行距離は平均70,000kmと非常に高い耐久性が要求される。故障などで稼働が停止したときの社会的影響は大きく、多くの人に迷惑がかかることになる。

したがって、ドライバーの思いは「予定通り何事もなく荷物・人を送り届けること」であり、運行管理者の思いはそれに加えて「安全であること」「経費が掛からない」「車両が壊れないこと」などになる。この思いに応えること、すなわち顧客の車両稼働を止めないことが日野自動車の使命であり、また商機にもなる。

車両を止めないためには、故障する前に整備する予防整備が必要になる。日野自動車では、データ活用による顧客および販売会社に対するサービス提供の第1ステップとして、最適な予防整備の実現を掲げた。

2016年4月からエンドユーザーの使用車両によるモニタを実施し、前述のデータ統合基盤へのデータ取り込みと分析を開始した。2017年4月からは本格稼働を開始、販売会社からエンドユーザーに対して予防整備の提案ができる体制になった。現在は蓄積されたデータの分析による交換時期予測の精度向上に努めているという。

日野自動車の予防整備の考え方

予防整備の精度が高まることで、突発的な故障による予定外の修理入庫が大幅に減ることになる。現在では毎月千件を越える路上故障による突発入庫があるが、これをゼロにするのが日野自動車の最終目標だと松本氏は言う。

適切な整備時期を予測してアナウンスできるようになったことで、販売会社にもエンドユーザーにもメリットが出てきている。販売会社は漏れなく予防整備の提案ができるようになったことで、車検や定期点検の入庫時の整備売上が拡大した。また突発入庫が低減したことで作業の平準化も可能になった。一方エンドユーザーにとっては、車検や定期点検に合わせて予防整備が可能になったことで、故障修理の費用削減およびダウンタイムの削減が実現した。予備車両を持っているエンドユーザーは少ないので、ダウンタイムの削減は特に顧客満足度向上にも影響する。

部品交換時期の予測は、部品特性によって3種類に分けて考える必要があると松本氏は指摘する。1つは排ガス浄化装置のように使用状況により徐々に劣化していくもの。2つ目は始動装置のように使用回数の閾値があるもの。3つ目は燃料噴射装置のようにある異常値を超えるとアラートが出るもの。この特性の違いを考慮して交換時期予測モデルを作成する必要があるというのだ。

統合データを活用したさらなる展開

データ活用の第2ステップとしては、2つの取り組みがあった。1つは位置情報・故障コードの活用による緊急対応、もう1つは「お客様ポータル」(HINO CONNECT)の提供である。

緊急対応システムの導入前には、運転手からの路上故障連絡を受け付けても、正確な故障車両の場所・故障内容の把握が難しいという課題があった。運転手は事故を起こして落ち着きを失っており、地元の道を走っているわけではないので、位置もよくわからないことが多い。場所を確認するだけでも15分掛かることなど珍しくはなかったという。

導入後は、車両通信機から位置情報と故障コードがリアルタイムに送られてくるようになったため、場所も故障内容も即座に把握でき、運転手に対してはそれらの情報を再確認するだけでよくなった。これにより、販売会社は出動および入庫対応が効率化でき、エンドユーザーは路上故障から早期復帰が可能になり、ダウンタイムの削減につながった。

もう1つのお客様ポータル、HINO CONNECTはエンドユーザーの運行管理者に向けたサービスである。エンドユーザーの運行管理者は、安全装置の作動状況と故障状態についてのメール通知を受けたり、月次の燃費レポートや緊急時の自社車両の位置をWebで確認できるようになった。

今後の展望

データ活用による顧客サービスを今後も拡大するうえで、業務面、サービス面のそれぞれの課題が見えてきたと、松本氏はいう。業務面では、社内のシステム普及促進が必要であり、これには研修などを実施する専任組織設立を考えているという。また販売会社ではこれらのサービスを活用できる人と環境が必要であり、販売会社の業務効率化が急がれる。さらに社内でのデータ活用活性化のためにデータを抽出しやすい環境を整備することにも取り組まなければならない。一方サービス面では、システム構築コストの回収を意図した、有償コンテンツの提供を計画しているという。

現状では、製品ライフサイクルにおける保守の部分でのみデータ活用しているが、開発設計から廃棄・リサイクルまでの全ライフサイクルに拡大することを日野自動車は目指している。そのため生産、社内業務、民間整備工場および「お客様の声」などのデータをデータ統合基盤に追加していく方向だという。

将来的には、車両の使われ方をすべて可視化し、車両開発や商品企画などにフィードバックし、よりよい商用車とサービスを提供するために利活用されていく展望を抱く。日野自動車の、データ活用による商品・サービスの質の向上、それによるお客様満足度の向上への挑戦はまだまだ続く。

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