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新しいデータソースとアナリティクスを活用したインサイトの収益化とビジネスの生産性向上


本記事は、Teradata Universe Tokyo 2019にて、モバイル・テレシステムズ ヘッド・オブ・ビッグデータ・コマーシャルプロダクツ アレクセイ・マーモントフ氏に講演いただいた同名セッションの内容を再構成したものです。

モバイル・テレシステムズ ヘッド・オブ・ビッグデータ・コマーシャルプロダクツ  アレクセイ・マーモントフ氏

ビッグデータ戦略を推し進めるロシアのモバイル・テレシステムズ(MTS)

MTSはロシア最大の携帯電話会社だが、それに留まらず各種消費者サービスのエコシステムを構築している。たとえば、インターネットおよび有料TVの契約者数は360万人、衛星電話事業も保有し、銀行事業ではクライアント数300万件、小売チェーンにおいては5,700店舗が加盟している。

モバイル事業をはじめとするこれらの顧客から大量のデータが日夜収集されており、この大量データをどのように活用してビジネスに成果をもたらすかがMTSおよびマーモントフ氏の課題になっている。

MTSのビッグデータ戦略

MTSのビッグデータ戦略は主要な3つの要素から構成される。1つ目は顧客ナレッジである。顧客の取引および通話履歴などがすべて一元的に蓄積されたデータレイクであり、戦略のベースになる。

このデータレイクから2つの戦略が導き出される。1つは既存の通信事業、すなわちコア・ビジネスの拡大戦略だ。プライオリティが高く、多くの開発リソースが割かれている。もう1つは新規事業のアイデアやビジネス機会の探索だ。現在はFinTech、AdTechおよびエンターテインメントの3分野に注力して、事業開拓を進めているという。

データレイクは顧客のデジタル・ツイン

戦略のベースとなるデータレイクは、「顧客のデジタル・ツインだ」とマーモントフ氏は言う。課金システム、CRM、モバイルネットワーク・モニタリングなど60以上のITシステムの顧客データを地理・位置情報を含めて集約したものだ。インターネットでの行動、通話履歴やショートメッセージサービス(SMS)でのコミュニケーションパターン、オフラインの購買行動など、顧客の人生や生活における重要情報がすべて含まれている。

データレイクのデータ量は加速度的に増えている。現在2ペタバイトだが、1年後には13ペタバイトに増えると予測している。これには2つの理由があり、1つは保持期間をこれまでの2ヵ月から2年以上に増やしたからだ。今後は3年以上になる予定だ。もう1つは管理指標を1,000項目から3,000項目に増やしたこと。2020年には5,000超の項目数になるという。データ量は増えたが、様々な工夫により、これらのデータを関連システムからリアルタイムで取得できるようになったという。

データ活用事例1:NPS分析

膨大なデータレイクから実際にどのような価値を導き出しているのか。 一つ目の事例は、NPS分析だ。NPSとはNet Promoter Scoreの略で、顧客が第三者にどれぐらい自社の製品やサービスを推奨する傾向があるかを示す指標で、顧客ロイヤルティを数値化する指標だ。 MTSの顧客は1億人以上おり、すべての顧客のNPSを把握できているわけではない。そこで1年以上にわたって調べた230万人分のスコアと、スコアに関連すると考えられるすべてのインタラクション・データから、特定顧客のNPSを予測する機械学習モデルを開発した。その精度は極めて高く、推奨者も批判者も8割ぐらいの確率で予測できる。

さらに推奨者や批判者になる原因を探るために、例えばモバイルネットワークやコールセンターでの対応の品質など、原因になりうる項目で顧客を15のクラスタに分けた。モスクワおよびモスクワ近郊の1000万人の契約者にクラスタ別の対策を実施したところ、期待以上に大幅なNPSの引き上げに成功した。この結果を受けて、同様の対策をロシア全土に拡大するという。

データ活用事例2:社員の離職防止

MTSには顧客データ以上に質の高い従業員データが存在している。たとえば同僚とのやり取りにどのようなツールを使っているのか、どのぐらい集中して仕事をしているのか、どんなミーティングに参加し、それには誰が参加しているか、誰がどのデータマートを使って分析し、どんなスクリプトを書いているかなどをすべて把握しているという。

これらのデータを基に機械学習モデルを構築し、退職確率の高そうな従業員を洗い出し、各部門長にレポートする。部門長が退職をさせるべきでないと考える重要な従業員に対して引き留めが実施された。対象となった部門では従業員の50%を維持できたという。

この結果を受けてMTSでは、このシステムを全社展開するとともに、ロシアの大手企業に外販する予定だ。

データ活用事例3:迷惑電話ブロッカー

ロシア国内では、不要な営業電話などの迷惑電話が1人あたり平均月3回かかってくるという。中には1日に数件かかってくる人もいて、大きな問題になっている。このような電話は、発信者側の電話番号がすぐに変更され、毎週700件ほどの新規電話番号が出現するため、いかに早く迷惑電話の発信者番号を検出するかが対策の鍵となる。そこですべての電話番号を機械学習モデルで詳細分析し、スピーディーに迷惑電話の発信元を洗い出すシステムを開発した。

このプロジェクトもスモールスタートしたが、好評を得たため、広い区域で有料化も含めたサービス展開をする予定だ。

データ活用事例4:コミュニケーション効率向上

人間は性格の違いによって、同じ情報を与えても違う受け取り方をされることが知られている。例えば、人間の性格を「感情的か、理性的か」「伝統的か、先駆的か」という2本の軸を使って、「ロマンチスト」「保守主義者」「快楽主義者」「現実主義者」という4つのタイプに分類できる。同じサービスを勧めても、現実主義者はそれが最も良い選択なのかにこだわり、ロマンチストは楽しいのかどうかに強い関心を示すという。

そこで、顧客に関するインターネット上の行動、コールセンターへのコール履歴などのデータから機械学習モデルを構築し、顧客の性格タイプを予測するシステムを開発した。

これにより性格タイプ別にマーケティング・コミュニケーションを最適化したところ、コンバージョン率の増大が見られるなど、一定の効果があったという。他社に提供することで収益化を実現したいとマーモントフ氏は言う。

データ活用事例5:小売チェーンにおける従業員数の最適化

MTSは、30,000人の従業員と5,700店舗を有する、ロシアでも最大規模の小売チェーンである。それらの店舗は、ショッピング・モールの中、路面店、大きな都市、小さな町、郊外、地下鉄駅の前などありとあらゆるロケーションに存在し、顧客の来店パターンも様々だ。すべての店舗におけるすべての時間帯に十分な数の従業員が必要だが、これまでは店舗ごとの裁量で従業員を雇っていた。

しかしそれでは給与の不公平や人数の過不足が発生するため、小売店舗全体で従業員数を最適化するワークフォースマネジメントシステムを導入した。来店者数、取引内容、業務内容などの履歴データと、店舗の売上目標、マーケティング計画などから、15分間隔の顧客トラフィック、販売・サービス・契約などタイプ別の取引数を予測し、各店舗の1時間ごとの最適な従業員数を導き出すシステムである。

このシステムは、すでに小売全店舗に導入されており、10%以上の人件費削減と、スマートフォンおよびモバイル契約の1桁の売上増という成果が出ているという。

MTSは、膨大なデータを活用して「答え」を獲得し、その「答え」でビジネスの競争力を強化しつつある企業の一つなのだ。

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