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欧州自動車メーカーにおけるデータとアナリティクスの戦略的活用 -破壊的革新の時代に大きなビジネス成果を上げるアドバンスト・アナリティクス-


本記事は、Teradata Universe Tokyo 2019 での、テラデータ・コーポレーション シニア・インダストリー・コンサルタント ロバート・ウィデルによるセッションの講演内容を再構成したものです。

テラデータ・コーポレーション シニア・インダストリー・コンサルタント ロバート・ウィデル

欧州自動車メーカーを取り巻くビジネス機会

テラデータのシニア・インダストリー・コンサルタント ウィデルは、かつてボルボに在籍し、同社で戦略計画を立案していた経験がある。現在は、自動車業界の専門家として、欧州を中心に日本や米国の自動車メーカーにおいてアナリティクス実践の支援をしている。その中で、欧州の自動車メーカーを取り巻くキーワードは4つあると言う。

1つ目は、Industry 4.0。IoTおよびAoT(Analytics of Things、モノの分析)の進展により、センサーデータをもとにサプライチェーンが自動的に連結されるようになった。プロセスの自動化は、事業コストの大幅な削減をもたらす。

2つ目は、ビジネスモデル変革。従来の販売会社やリース会社などとのビジネス、いわゆるB2Bから顧客とダイレクトにつながるB2Cを中心とするモデルに転換しようとしている。そして、交通手段を一つのサービスとして提供するMaaS(Mobility as a Service)へ対応したビジネスモデルの構築を急いでいる。つまり、今までとは異なる新たな収益源を獲得することが可能となる。

3つ目は、電化。クルマと、道路に設置された通信設備との間の路車間通信技術、V2I(Vehicle-to-Infrastructure)により、走行中のクルマからデータ収集することが容易になった。同時にクルマ自体が電化も進んでいる。既存のクルマでは考えられないような、新たな枠組み、価値を提案できるようになる。

4つ目はテクノロジーの進化。AIや機械学習によるアナリティクス能力の飛躍的向上、それを活用した、時系列データと地理空間データを組み合わせて解析する4Dアナリティクス。いよいよ商用化される5G(第五世代通信)。こういった技術の進化は、ビジネスに更なる可能性をもたらす。コネクティッドカーの革新が続き、自動運転の実現を加速する。新しい製品、サービスの実現、迅速な収益化とその規模の最大化に貢献するだろう。

Industry 4.0の事例:スポット溶接の品質テスト自動化

クルマのボディを組み立てる際の溶接方法の一つである(抵抗)スポット溶接では、その作業自体はロボットによる自動化がかなり進んでいる。一方で、完了後の品質検査は人手に依存し、工数負荷が大きい。そこでロボットから溶接時の抵抗曲線データを収集し、検査結果と組み合わせ、承認可能、承認不可、可能と不可の中間というクラスタに分類するモデルを作成した。分類後、承認可能なものはそのままパスとし、中間と不可については対応するアクションを即座に実施できるようにプロセスを再構築した。このプロセス改善により欠陥を見つけだす確率も高まった。

この事例では、段階的にアナリティクスを進化させるアプローチを採用した。第1ステップでは、記述的アナリティクスを実施して、現状のプロセスとそのキーとなる変数を可視化した。第2ステップとして、原因分析を自動化して、問題の根源を明確化し、より迅速な改善を可能にした。そして、第3ステップは予測的アナリティクスの分析モデルを構築して、全工程において長期的に持続可能な品質向上を実現した。つまり、品質問題に影響するプロセスを予測し、事前に対処することが可能になった。この事例のメーカーでは、モデルの精度をさらに高めて、他の工場や塗装・組立など他の工程へ応用を推進しているという。

ビジネスモデル変革の事例:BtoCでのマーケティング課題への対応

ヨーロッパの自動車業界ではかつては販売会社などを相手とするB2Bのモデルが中心だったが、この1、2年でB2Cへトランスフォーメーションし、顧客接点が急速に増えている。その顧客接点も、販売店経由だけでなく、デジタルチャネルでの広告や販売が増大しており、マーケティング活動のマルチチャネル化による複雑度が増している。さらにMaaSの拡大に見られるようにクルマに対する顧客の価値観も変化している。このような背景の中、各自動車メーカーは、マーケティングコストのROI向上、試乗の促進とそれによる成約率の向上、および離反顧客の減少に取り組んでいる。

このビジネス課題に応えるため、テラデータでは、①最も高い収益をもたらす顧客を特定する「最優良顧客モデル」、②各車両の走行状況から次回点検整備に適切な時期を判定する「走行状況モデル」、③今後3~6カ月のうちに新車を購入する可能性の高い顧客を特定する「インマーケット・モデル」、④競合他社へ離反するリスクがある顧客を特定する「顧客離反モデル」の作成と分析を行っている。これらのモデルを作成するために顧客ID、車両ID、保有歴、販売データ、顧客接点での反応、点検整備履歴、インシデント発生履歴、走行距離、サービスやクレームの履歴など様々なデータが必要となり、データの整備も重要となっている。

電化の事例:バッテリー寿命の極大化

ハイブリッド車や電気自動車のバッテリーは高価な部品であり、早期交換は顧客にとってもメーカーにとってもコスト負担が大きい。したがって、バッテリーのエンド・オブ・ライフを見極めて、トラブルを起こさないなるべく長期間使いたいというニーズがある。

このニーズに応えるために、車両ID、バッテリーID、市場レポート、車外気温、稼働時間、走行距離などのデータを活用し、市場(地域)および車種で分類し、現状理解として何が起こっているかを分析した(記述的アナリティクス)。続いてその結果をテレマティクスデータ、周囲の気候や特有の走行条件データ(起伏、平均速度など)などと掛け合わせてバッテリーの寿命に関わる要因を分析した(診断的アナリティクス)。そして、その結果を点検整備履歴、故障診断機スキャンデータおよびインシデントレポートと突き合わせることで、個々のバッテリーの残存寿命を予測できるようになった(予測的アナリティクス)。この分析により、クルマをより効率的に走らせる意思決定をすることが可能にになった。

この事例でも先のスポット溶接の事例と同様に、記述的アナリティクス、診断的アナリティクス、予測的アナリティクスと段階的に分析を進化させていることが重要である。このような分析のアプローチにより、最終的には意思決定の自動化、経営的判断の自動化の実現が可能になる。

アナリティクスから得られるビジネス価値

以上3つの事例を見てきたが、これらのアナリティクスによるビジネス価値とはどのように評価できるのだろうか。年間500万台の車両を販売し、1300億ドルの売上を達成しているメーカーを例に、どのぐらいの価値をもたらすのか試算してみる。

それぞれの予測は以下の通り。

スポット溶接の品質テスト自動化:

スポット溶接に限れば20億円、工場と工程を横断する場合には200億円のコスト削減をもたらす。

BtoCでのマーケティング課題への対応:

マーケティング&販売予測は、現状のビジネスモデルだけで10億円、デジタル販売を追加すれば120億円の収益増が期待できる。

バッテリー寿命の極大化:

生産車両におけるEV車の割合が1%なら10億円、10%なら200億円のコスト削減をもたらす。

このような価値はPoCに終始している間は生まれない。データを製品化、サービス化してマネタイズする、すなわちアナリティクスを本番業務に活用することで、初めて持続的な価値創出に結びつくのである。そして、先進的な企業はすでに始めている。

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